React における ref、forwardRef および useImperativeHandle の使用シーン

前言#

React において、ref と forwardRef はすべての状況で必須ではありません。 React は宣言的な方法で UI を構築することを奨励しており、props と state を通じてビューの更新を駆動します。 ref と forwardRef はより命令的な操作に属し、通常は DOM 操作やコンポーネントインスタンスへのアクセスが必要な場合に使用されます。

使用シーン#

どのような場合に必須 (または非常に必要 / 強く推奨) で ref と forwardRef を使用するべきか:

1. DOM 要素を直接操作する:

これは ref の最も主要かつ古典的な適用シーンです。 React の宣言的な世界では、通常 DOM を直接操作することは避けます。しかし、いくつかのシーンでは、必須または直接操作 DOM がより便利で効率的です：

フォーカス管理 (Focus Management):
- 特定の要素にフォーカスを当てる: 例えば、フォームが読み込まれた後に最初の入力ボックスに自動的にフォーカスを当てる、またはモーダルが開いた後に最初のインタラクティブな要素にフォーカスを当てる。
- フォーカスを失ったときに操作を実行する: 例えば、入力ボックスがフォーカスを失ったときに検証をトリガーする。
テキスト選択 (Text Selection) と操作:
- プログラム的に入力ボックス内のテキストを選択する: 例えば、ボタンをクリックした後に入力ボックス内のすべてのテキストを自動的に選択する。
- テキストボックスのカーソル位置を取得または設定する。
メディア要素の制御 (Media Element Control):
- <video> または <audio> 要素の再生、停止、音量などを制御する: 例えば、カスタムのビデオプレーヤー制御を実現する。
- メディア要素のイベントをリッスンする: 例えば、ビデオ再生終了イベントをリッスンする。
Canvas 要素操作:
- Canvas 要素のコンテキスト (2D または WebGL) を取得して描画操作を行う。
サードパーティの DOM 操作ライブラリを統合する:
- 直接 DOM を操作するサードパーティライブラリを統合する必要がある場合 (現代の React アプリケーションではこのようなケースは少なくなっていますが)、例えば古い jQuery プラグインや、直接 DOM 要素にアクセスする必要があるチャートライブラリなど。
DOM 要素のネイティブメソッドをトリガーする:
- 例えば、input 要素の focus(), blur(), click(), select() などのメソッドをトリガーする。

例：入力ボックスにフォーカスを当てる

import React, { useRef, useEffect } from 'react';

function MyForm() {
  const inputRef = useRef(null);

  useEffect(() => {
    // コンポーネントがマウントされた後、input 要素にフォーカスを当てる
    inputRef.current.focus();
  }, []);

  return (
    <div>
      <input type="text" ref={inputRef} placeholder="入力してください..." />
      {/* ... 他のフォーム要素 ... */}
    </div>
  );
}

2. 子コンポーネントの DOM ノードにアクセスする (必要な場合は forwardRef):

デフォルトでは、親コンポーネントは ref を通じて子コンポーネントの DOM ノードに直接アクセスすることはできません。親コンポーネントで子コンポーネントの DOM 要素を取得したい場合 (例えば、子コンポーネントがカスタムの Input コンポーネントで、親コンポーネントがその内部の <input> 要素を取得する必要がある場合)、 forwardRef を使用して ref を子コンポーネント内部の DOM 要素に渡す必要があります。

なぜ forwardRef が必要なのか？

これは ref がデフォルトでコンポーネントインスタンス (クラスコンポーネントの場合) または DOM 要素にのみバインドできるためです。関数型コンポーネントの場合、デフォルトでは ref はコンポーネント自体にバインドされますが、関数型コンポーネント自体にはインスタンスがないため、ref は通常 null になります。 forwardRef を使用すると、親コンポーネントから渡された ref を子コンポーネントの特定の DOM 要素またはクラスコンポーネントインスタンスに転送できます。

例：親コンポーネントが子コンポーネント Input の DOM 要素を取得する

import React, { useRef, forwardRef, useImperativeHandle, useEffect } from 'react';

// 子コンポーネント - カスタム Input コンポーネント
const CustomInput = forwardRef((props, ref) => {
  const inputElementRef = useRef(null);

  // useImperativeHandle を使用して子コンポーネントのメソッドを公開する (オプション、非 forwardRef 必須)
  useImperativeHandle(ref, () => ({
    focus: () => {
      inputElementRef.current.focus();
    },
    getValue: () => {
      return inputElementRef.current.value;
    }
  }));

  return (
    <div>
      <label htmlFor={props.id}>{props.label}: </label>
      <input type="text" id={props.id} ref={inputElementRef} {...props} />
    </div>
  );
});
CustomInput.displayName = 'CustomInput'; // React DevTools に表示しやすくするため

// 親コンポーネント
function ParentComponent() {
  const customInputRef = useRef(null);

  useEffect(() => {
    // コンポーネントがマウントされた後、CustomInput コンポーネント内部の input 要素にフォーカスを当てる
    customInputRef.current.focus();

    // CustomInput コンポーネント内部の input の値を取得する (useImperativeHandle で公開されたメソッドを通じて)
    // const inputValue = customInputRef.current.getValue();
    // console.log("Input Value:", inputValue);

  }, []);

  return (
    <div>
      <CustomInput label="名前" id="nameInput" ref={customInputRef} />
      {/* ... 他の内容 ... */}
    </div>
  );
}

3. 特定のコンポーネントライブラリやシーンでコンポーネントインスタンスにアクセスする必要がある ( useImperativeHandle と forwardRef を組み合わせて):

React はデータ駆動を推奨していますが、いくつかの状況では、親コンポーネントで命令的に子コンポーネントのメソッドを呼び出す必要があるかもしれません。例えば：

子コンポーネントの内部状態や動作を制御する: 例えば、ポップアップコンポーネントの open() または close() メソッドをトリガーする、またはテーブルコンポーネントの refreshData() メソッドを呼び出す。
特定のサードパーティ UI コンポーネントライブラリを統合する: 一部のコンポーネントライブラリは命令的な API を提供する場合があり、メソッドを呼び出すために ref を通じてコンポーネントインスタンスを取得する必要があります。

useImperativeHandle を使用して親コンポーネントに公開する API を制御する:

親コンポーネントが ref を通じて子コンポーネントのメソッドにアクセスできるようにする必要がある場合、通常は forwardRef と useImperativeHandle フックを組み合わせて使用します。 useImperativeHandle を使用すると、どのメソッドやプロパティが ref を通じて親コンポーネントに公開されるかを正確に制御でき、すべての内部詳細を公開することを避けることができます。

ref と forwardRef の使用を避けるべき場合:

すべては宣言的な方法 (props と state) を優先すべきです。 できるだけ props を通じてデータやコールバック関数を渡して子コンポーネントの動作や状態を制御します。
コンポーネント間の通信に ref を過度に使用することを避ける。 過剰な ref の使用はコンポーネントの関係を複雑にし、メンテナンスが難しくなり、React のデータフローを破壊します。
子コンポーネントの state にアクセスするために ref を使用しない。 データを props を通じて渡し、子コンポーネントがデータをコールバック関数を通じて親コンポーネントに渡す (状態の持ち上げ) べきです。
明確な必要性がない限り、forwardRef を乱用しない。 親コンポーネントが子コンポーネントの DOM またはインスタンスに直接アクセスする必要がない場合は、forwardRef を使用する必要はありません。

まとめ:

ref と forwardRef は React における強力なツールですが、慎重に使用する必要があります。それらは以下の状況で必要または非常に有用です：

DOM 要素を直接操作する必要がある場合 (例えば、フォーカス管理、メディア制御など)。
親コンポーネントが子コンポーネントの DOM ノードにアクセスする必要がある場合 ( forwardRef を使用)。
特定のシーンで命令的に子コンポーネントのメソッドを呼び出す必要がある場合 ( forwardRef と useImperativeHandle を使用)。

宣言的な方法で問題を解決することを優先してください。宣言的な方法が実現困難であるか、命令的な操作がより効率的で簡潔な場合にのみ、ref と forwardRef の使用を検討してください。それらの過度な使用を避け、コードの明確さとメンテナンス性を保ちましょう。